空き家は放置すると固定資産税はどうなる?デメリットを解説

放置された空き家は、防犯や防災上の問題だけでなく、倒壊や外部材落下の危険性も抱えています。
景観も害するという問題も生み出し、放置空き家は一種の社会問題となっています。

放置空き家を解消することを目的に、2015年には空き家特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)という法律が制定された次第です。

では、空き家は放置すると、実際のところどのようなデメリットが発生するのでしょうか。
この記事では「空き家の放置」をテーマに解説します。

空き家を放置している理由

そもそもなぜ空き家が放置されてしまうのか、理由が気になるところです。
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合では、空き家所有者に対して「空き家にしている理由」のアンケート調査を行っています。

順位理由回答割合
1時々使用するから29.5%
2家財道具・仏壇があるから27.7%
3先祖から受け継いだ物件で手放せない22.3%
4他人に貸すのは不安18.8%
5買い手がないか、売っても安価だから17.9%
6老朽化が進んでいる11.2%
7敷地や道路条件が悪くて利用しにくい8.9%
8特に理由はない8.0%
9建物が狭い、使いにくい7.1%
10その他6.3%
11貸そうにも改修費用がない5.4%
出典:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合「土地・住宅に関する消費者アンケート調査(2017年3月)」(https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2016/08/【報告書】不動産市場実態把握調査_170413.pdf)

アンケート結果によると、1位が「時々使用するから」、2位が「家財道具・仏壇があるから」、3位が「先祖から受け継いだ物件で手放せない」となっています。

「買い手がないか、売っても安価だから」といった理由は5位であり、「売れずに困っているから空き家にしている」人は必ずしも多くないという点が特徴です。

また、「他人に貸すのは不安」が4位となっています。
「借主が居ないから空き家にしている」というよりは、むしろ「貸すことを躊躇している」といえます。

アンケート結果からすると、空き家を解消するには時々使用することを止めてもらい、家財道具の処分や仏壇の魂抜き等を行うことが必要といえそうです。

空き家を放置するデメリット

空き家を放置するデメリットについて解説します。

傷んで資産価値が下落する問題がある

空き家は、放置することで建物が傷み、資産価値が下落してしまうという問題があります。
建物は、カビ等の発生を防ぐには定期的に換気をして空気を入れ替えることが必要です。
また、定期的に排水をしないと配管の中にある封水という水が蒸発してしまい、下水から汚臭が逆流してしまいます。

さらに、空き家の放置が進めば、庭に雑草が繁茂し、建物内にも植物が生えるという現象も生じます。

きちんと管理されていた空き家であれば取り壊さずに売れる可能性もありますが、建物価値が大きく下がった空き家の場合は取り壊さないと売れないことも多いです。
取り壊しが必要ということであれば、建物はマイナスの資産ということになります。

空き家は放置すると価値がゼロ円まで下がるだけでなく、マイナスの資産にもなりかねないという特徴があります。

近隣に迷惑をかける

放置された空き家は近隣にも迷惑をかける点がデメリットです。
例えば、敷地内にゴミが不法投棄されたり、野良猫に糞をされたりすることで衛生上の問題が生じることもあります。

老朽化が相当に進めば、倒壊や外部材落下の危険性もあり、景観の悪化の問題も生じます。
場合によっては、犯罪者が出入りし地域の治安の悪化につながるケースや、放火される可能性もあります。

空き家は近隣住民にとって危険な存在となることから、近隣住民から自治体へクレームが入ることが多いです。
自治体は近隣住民からのクレームが入ると、空き家の実態を調査し、危険と判断すれば特定空き家に指定することができます。

特定空き家とは、空き家特別措置法によってできた制度であり、周辺に害を及ぼす懸念のある危険な空き家のことです。
特定空き家に指定されると、空き家所有者は自治体から助言や指導、勧告、命令といった是正指導を受けることになります。

特定空き家の指定は、近隣住民からのクレームがきっかけになることがほとんどだといわれています。
特定空き家に指定されないようにするには、空き家を放置せず適切に管理することが必要です。

所有者責任を問われるリスクがある

建物所有者には、民法上、工作物責任(所有者責任)が課されています。
例えば、瓦や外壁が落下することで、通行人に怪我をさせたり、近隣の車を傷つけたりすると空き家の所有者に責任が及びます。

工作物責任は重い責任であり、所有者に過失(うっかり)が無くても負わされる責任(無過失責任)です。

また、屋根や外壁は台風や暴風雨が通過することで、短期間のうちに痛むこともあります。
台風や暴風雨によっても、工作物責任を負う可能性が出てくることは十分に考えられます。

固定資産税が上がる可能性もある

空き家が特定空き家に指定されると、固定資産税が上がる可能性があります。
特定空き家になると、助言や指導、勧告、命令という順番で是正指導を受けることになりますが、助言や指導を無視し勧告までにいたると住宅用地の軽減措置が適用されなくなります。

住宅用地の軽減措置とは、住宅が建っている土地の固定資産税が減免されるという制度です。
住宅用地の軽減措置は、利用されていない家であっても適用されることが原則ですが、勧告を受けた特定空き家は例外的に適用対象から外されることとなっています。

例えば、空き家の土地が200平米以内の場合には、固定資産税は約4.2倍程度に上がる可能性があります。(宅地には評価額の70%を課税標準とする負担調整措置があるため、単純に6倍になるわけではありません。)

行政代執行が行われる可能性がある

特定空き家は、命令も無視すると、最終的に行政代執行が行われます。
行政代執行では、自治体が強制的に空き家を取り壊すことになります。
空き家の取り壊し費用は、最終的には空き家所有者の負担です。

仮に空き家所有者が取り壊し費用を払えない場合、取り壊し後の更地を自治体が売却して資金を回収することになります。
空き家を放置すれば、最終的に土地まで失う可能性があるということです。

放置空き家の対処術

放置空き家のデメリットを避けるには、少なくとも特定空き家の指定を避けることがポイントです。
特定空き家の指定を避けるには、以下の3点が対処術となります。

  • 適切に管理する
  • 売却する
  • 有効活用する

1つ目は、適切に管理をするということです。
利用されていない空き家であっても適切に管理されていれば、特定空き家に指定される可能性は低いといえます。
近年は、空き家を管理するサービスも増えてきましたので、遠方の物件であれば空き家管理サービスを利用してみるのも一つです。

2つ目は、売却が挙げられます。
売却してしまえば、所有権はなくなりますので空き家問題からは解放されます。
できれば取り壊さなくても売れる状態のうちに売却することが、コスト削減の観点からは望ましいです。

3つ目は、有効活用が考えられます。
貸せば空き家ではなくなりますので、特定空き家に指定されることはなくなります。
賃料査定という形で一度不動産会社に物件を見てもらえば、実際に貸せるかどうかを判断することができます。

まとめ

以上、空き家の放置をテーマに解説してきました。
空き家を放置している理由としては、「時々使用するから」や「家財道具・仏壇があるから」、「先祖から受け継いだ物件で手放せない」といったものが上位を占めています。

空き家を放置するデメリットとしては、「傷んで資産価値が下落する問題がある」や「近隣に迷惑をかける」等が挙げられます。

放置空き家の対処術としては、「適切に管理する」や「売却する」、「有効活用する」といった選択肢がありました。
放置された空き家はデメリットが顕在化する前に、なんらかの対処することをおすすめします。