利用していない空き家を貸したいというニーズは結構多いです。
借主を見つけることができれば、家賃収入も入ってきます。
親から相続した空き家でローンも完済している状態であれば、新規に投資をするよりも手取り収入は多くなります。
せっかく持っている不動産ですので、賃貸に出して有効活用したいと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では「空き家を賃貸に出す」ことをテーマに解説します。
空き家を賃貸に出す方法
空き家を賃貸に出すには、最低限、以下の2点が必要です。
- 家具を処分してがらんどうの状態にする
- 不動産会社に賃貸仲介を依頼する(管理会社に管理を委託する)
まず、空き家を貸し出すには、空き家内の残置物は処分してがらんどうの状態にすることが原則です。
不動産の賃貸では、原則として家具等の動産を貸さないこととなっています。
例外として家具付き物件として貸す場合もありますが、貸せば所有権は貸主のままですので自然に破損すれば貸主の費用負担で直さなければなりません。
動産は不動産に比べると破損しやすいため、壊れやすいものは貸さないのが基本となります。
家が貸せる状態になったら、不動産会社に借主を探してもらう賃貸仲介を依頼します。
ただし、貸主は管理会社に管理を委託することが一般的であることから、先に管理会社を見つけて管理委託契約を締結することも多いです。
賃貸住宅の管理とは、入居者からのクレーム対応や家賃不払い時の督促等の仕事があります。
管理会社は、通常は不動産会社ですので、管理を任せれば貸主を探す賃貸仲介も行ってくれます。
管理会社に管理を委託しない場合には、別途、不動産会社に賃貸仲介だけを依頼することになります。
管理会社や不動産会社の探し方は、賃料査定を依頼して探すことが一般的です。
賃料査定自体は無料ですので、何社か当たり、管理実績が豊富で賃貸に強そうな不動産会社を探すことをおすすめします。
賃貸の場合、不動産の所有権は貸主のままであることから、貸したものを勝手に借主が修繕することはできないのが原則的なルールです。
そのため、賃貸に耐えられない著しい破損や損傷がある場合には、貸す前に貸主が修繕する必要があります。
また、キッチンやバス、トイレ等があまりにも古ぶるしい場合、リフォームが必要となってしまうことも多いです。
よって、古い空き家を貸す場合には、賃料査定の段階でそのまま貸せるか不動産会社に確認するようにしましょう。
空き家を賃貸に出したときの相場
主な都府県における戸建て賃貸の賃料相場(2021年)は、下表の通りです。
都府県 | 月額賃料(万円) | 平均面積(平米) |
東京都 | 16.0 | 77.09 |
埼玉県 | 8.7 | 75.96 |
千葉県 | 8.2 | 79.70 |
神奈川県 | 12.0 | 79.65 |
大阪府 | 8.97 | 77.40 |
兵庫県 | 8.52 | 80.69 |
京都府 | 8.67 | 70.99 |
「公益社団法人東日本不動産流通機構」(http://www.reins.or.jp/pdf/trend/nmw/NMW_2021/NMW_2021_2_2.pdf)
・大阪府、兵庫県、京都府
「公益社団法人近畿圏不動産流通機構」(http://www.kinkireins.or.jp/trend/nenpo/2021/pdf/28.pdf)
賃料の相場は、立地や築年数によっても異なります。
基本的には立地が良く、築年数の新しい物件の方が賃料は高いです。
また、戸建て賃貸の場合、借主のターゲットはファミリー層になります。
そのため、学区が良い、近くにスーパー等があって生活しやすい等の住環境が整っている物件の方が貸しやすく、相場も高くなります。
空き家を賃貸に出すメリット
空き家を賃貸に出すメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
【賃貸に出すメリット】
- 家賃収入が得られる
- 物件の価値を自然と維持できる
- 特定空き家の指定を回避できる
1つ目のメリットは、家賃収入が得られるという点です。
家賃収入は安定しているため、年金のように利用することができます。
2つ目のメリットは、物件の価値を自然と維持できるという点です。
空き家は、放っておくと室内に湿気や汚臭が充満し、建物の価値が下がってしまいます。
借主が住めば日常的に換気や排水が行われるため、自然と建物が管理されるということが利点です。
3つ目のメリットは、特定空き家の指定を回避できるという点が挙げられます。
特定空き家とは、倒壊の恐れや衛生上有害となる恐れがある等の危険な空き家のことです。
空き家は過度に管理不行き届きが継続されると、いずれ自治体から特定空き家に指定されてしまう可能性があります。
特定空き家に指定され、一定の段階を踏むと土地の固定資産税が上がるリスクもあります。
賃貸に出しておけば、建物が自然と管理されるため、特定空き家の指定を回避できる点もメリットです。
空き家を賃貸に出すデメリット
空き家を賃貸に出すデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
【賃貸に出すデメリット】
- 修繕費が発生する
- 空室時も維持費がかかる
- 確定申告の手間が発生する
1つ目のデメリットは、修繕費が発生するという点です。
賃貸借契約では、貸主側に修繕義務があります。
経年劣化や通常損耗によって破損したものは、原則として貸主が修繕すべき部分です。
例えば、畳やクロスの日焼けによる変色や壁の画鋲穴の跡等は貸主の費用負担で修繕することになります。
2つ目のデメリットは、空室時も維持費がかかるという点です。
土地と建物の固定資産税や、建物の損害保険料といった維持費は空室時でも発生する費用となります。
また、空室が発生すれば、次の入居者を決める際に仲介手数料が発生します。
場合によっては、クロスの張り替え費用等も必要です。
空室は収入が入ってこなくなるだけでなく、出費が生じる要因にもなります。
3つ目のデメリットは、確定申告の手間が発生するという点です。
個人が賃貸経営を行ったときに得られる所得(利益のこと)を、不動産所得と呼びます。
サラリーマンであっても、不動産所得が20万円を超すような場合には、毎年、確定申告を行うことが必要です。
確定申告は毎年行わなければいけないため、面倒に感じてしまう人もいます。
借主がなかなか決まらないときの対処法
賃貸物件で借主がなかなか決まらないときの対処法としては、借主の対象を広げてみることがセオリーです。
例えば、「子ども食堂」や「グループホーム」、「デイサービス」、「NPO法人の事務所や作業所」等の住宅以外の用途で貸し出すという方法もあります。
子ども食堂とは、経済的に厳しい状況の家庭の子どもに対して食事を提供する場のことです。
グループホームとは主に認知症高齢者を対象とした小規模な介護施設、デイサービスとは通所介護施設になります。
このような住宅以外の用途の場合、空き家バンクに登録すると見つかる可能性があります。
空き家バンクとは、自治体が行っている空き家のマッチングサービスのことです。
空き家バンクは主に売買を取り扱っていますが、自治体によっては賃貸のマッチングを行っているところもあります。
空き家バンクは必ずしもすべての自治体に存在するわけではありませんが、空き家を活用したいのであれば該当する自治体の空き家バンクはチェックしたいところです。
ただし、空き家バンクは賃貸市場では成立しにくいニーズが多いため、借主は見つかったとしても賃料は相場よりも低い可能性はあります。
よって、まずは不動産会社に依頼して一般的な借主をしばらく探してみることをおすすめします。
まとめ
以上、空き家を賃貸に出すことをテーマに解説してきました。
空き家を賃貸に出すには、家具等を撤去してがらんどうにし、不動産会社に賃貸仲介を依頼することが第一歩です。
空き家を賃貸するメリットには「家賃収入が得られる」や「特定空き家の指定を回避できる」等がありました。
一方で、「修繕費が発生する」や「空室時も維持費がかかる」等がデメリットです。
借主がなかなか見つからないときは、借主の対象を広げてみることが効果的な考え方となります。
空き家を賃貸に出すときの参考にしていただければと思います。